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その七拾弐 : 冬は羊歯を観察しよう(1)
シダの最大の特徴は、種子ではなく胞子で増えることです。
そのため、花はつけないで、胞子葉と呼ばれる胞子をつける専門の葉ができます。胞子がつかない葉を栄養葉といいます。胞子はミクロン単位の小ささでごく軽いことから、移動能力は抜群で、風さえあれば、どこまででも飛んでいきます。
しかし、胞子が地上に落ちれば、どこでも発芽できるわけではありません。胞子から芽ばえるのは前葉体(ぜんようたい)という、湿度を好み直射日光を嫌う成長段階だからです。一般的にシダ類が陰湿地に多い理由は、ここにあります。
この前葉体は、日陰の湿った岩のすき間で普通に見ることができます。大きさは数ミリで、緑色のハート形をしています。ルーペでよく観ると、半透明の細胞膜が美しく、ちょっと感動します。一度、前葉体捜しに挑戦してみて下さい。

この移動能力の高さが、地球温暖化に伴う勢力拡大の大きな力になっています。今まで冬の寒さで年越しできなかった南方系のシダが少しずつ増え始めています。特にシロヤマシダ類やハチジョウシダ類で、その傾向が顕著です。
近々、リュウビンタイやコウモリシダといった、姿を見ると感動するシダたちが、愛知県でも見られるようになるかもしれません。
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(2014.01) |
北岡明彦さんを紹介します
1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、
日本全国を飛び回る。 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、
一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。 |
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