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その六拾 : 森を楽しむ(初夏編) その1
今年の春はフジ(ノダフジ)の花が超満開でした。私が植物を観察してきた約40年間では、最も多く咲いた気がします。
それには、2つの要因が考えられます。ひとつは、今年が花の咲き年(当たり年)だったこと。もうひとつは、近年ナタを持って山に入る人が急減したことです。
昔から杣人たちは山を歩く時、他人の山でもフジなどのツル植物は必ず切っておく習慣がありました。フジは植林したスギやヒノキに巻きついて、折ったり傷つけたりするからです。
同じようなツル植物で、初夏に目立つのがマタタビです。花が咲く初夏になると、葉の前半部分が真っ白になって、緑色の森林の縁でよく目立つようになります。
これは、受粉の役目をする昆虫たちに、近くに花があることを知らせるサインだと思われます。
葉をかじると、ピリッピリッとした、かなり強い刺激を感じます。これがマタタビ酸の味で、この効果により疲れた体が回復して、「また旅」に出ることができる!
というのが和名の語源だと言われています。弘法大師由来の名前だという、いかにもありそうな俗説もあります。
この白色は、花が終わる真夏になると役目も終わり、もとの緑色に戻ります。その変化の面白さに注目してみましょう。
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(2013.05) |
北岡明彦さんを紹介します
1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、
日本全国を飛び回る。 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、
一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。 |
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