バックナンバー
■vol.01里山が荒れてるって本当?
■vol.02木を植えることは善…?
■vol.03生物多様性ってなんだろう?
■vol.04雑木林的思考のすすめ
■vol.05ナラ枯れ病について想う
■vol.06「マンサクのファイトプラズマ病」の動向
■vol.07森林の持つ働き(生態系サービス)について、ちょっと考えよう
■vol.08地球温暖化防止と森林の働き
■vol.09もうすぐクリスマス!
■vol.10自然界の落し物集め
※このコーナーは、みなさんのご質問やご意見をもとに執筆されています。どんなことでも、お待ちしています。
こちら からどうぞ。

 その拾壱 : 生物多様性条約第10回締結国会議に思う・・・

 新聞紙上にしょっちゅう、「COP10」に関する記事が載ります。COP10は略語で、「生物多様性条約に関するCOP10」という表現が正確です。今回は、ちょっと、このCOP10について・・・。

 もちろん、生物多様性が重要なことは間違いありません。
 また、これを機会として、ひとりひとりが生物の多様性や自然環境の重要性について考えることは大変良いことです。

 しかし、ちょっと考えることもありそうです。

 まず、生物多様性って何だろう?
 世の論評は「里山=生物多様性」という感じです。以前このコーナーで書いたように、里山の雑木林は薪炭林などとして適切な利用があった結果として出来た、二次的な自然です。二次的な自然には、あらゆるレベル(植生遷移の過程)があって、どれが良くて、どれが悪いという比較ができるものではありません。
 また、単位面積あたりの生物の種類数だけが重要という訳でもありません。例えば適正に間伐された人工林の植物種類数は、天然性の二次林や原生林よりも多い場合が頻繁にあります。だからといって単純に、管理された人工林が天然林より生物多様性に優れている、とは言いません。生物の多様性は、その場の環境(地形・地質・標高など)に非常に大きな影響を受けます。何が大切かは、みんなで考える必要があります。

 さらに、一番の問題は、COP10関連として使われる税金です。たかだか、この会議開催のために何億円もの税金を投入することです。お金をかけ過ぎた、ほとんど誰も見ない多量のパンフレット、会議を盛り上げるとして各地で開催される行事や会議(参加者は無理矢理集められることも多い)などなど、本当に必要なのでしょうか?
 そして、地球温暖化防止会議で演じられたような各国の政治力と力関係だけが幅をきかす国際会議のあり方なども大きな課題です。

 こうした課題を含めて、もう一度、生物多様性そのものについて考えてみま
しょう。






*「森のひとり言」バックナンバー:その参『生物多様性って何だろう?』
 を併せてお読み下さい。

(2010.01)






北岡明彦さんを紹介します
 1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、 日本全国を飛び回る。
 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、 一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
ページを開いた本のイラスト  『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。





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