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その六拾六 : 秋の七草 (その2) キキョウ
秋の七草のうち、ナデシコ以上に著しく減少しているのがキキョウです。
古くより薬草として重用したり、明智光秀の家紋に使われたり、身近な存在であったキキョウですが、今ではレッドデータブックの記載種になってしまいました。
もともと、中山間地と呼ばれている山村地域に多い土手の草刈場に生育する植物で、標高200〜1,000m程度の地域で見られます。草地が森林化するとすぐに姿を消してしまいますが、再び草刈りを定期的に実施すると、割と早期に復活します。こうした性格は、同じ秋の七草として詠まれているオミナエシと全く同じです。
それもそのはずで、キキョウ科やオミナエシ科に属する植物の祖先の多くは、その昔、日本と大陸が陸続きだった頃に、中国や朝鮮半島を経由して日本に渡来した種類だからです。キク科やスミレ科、フウロソウ科などにも同系の植物がかなり含まれます。多くは草地性の植物で、満州などの広大な草原が故郷である植物たちです。
豊田市の足助地区や下山地区には比較的生育地が多く残っていて、車を走らせていると、時々キキョウの美しい紫花が見つかり、思わず「アッ、キキョウが咲いている!」と叫んでしまいます。
でも、花のピークは8月中〜下旬で、実はキキョウは晩夏を代表する植物です。ナデシコもまた晩夏にピークを迎え、中秋(陰暦の8月15日)の頃には、この2種類は完全に盛りを越えています。
本当は秋の七草が同じ場所で同時に咲くことは、滅多にありません。
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(2013.09) |
北岡明彦さんを紹介します
1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、
日本全国を飛び回る。 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、
一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。 |
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