※このコーナーは、みなさんのご質問やご意見をもとに執筆されています。どんなことでも、お待ちしています。
こちら からどうぞ。
|
|
その参拾六 : 植物の分布の不思議(4) アキチョウジ
日本列島は南北に長く、標高差があることなどから、近縁な種類が微妙な境界線を維持しながら住み分けている事例が多く見られます。
愛知県でも、太平洋側分布植物のヤブウツギと日本海側分布植物のタニウツギ、西日本型分布植物のアキチョウジと東日本型分布植物のセキヤノアキチョウジといった組み合せの境界線があります。
例えば、アキチョウジとセキヤノアキチョウジの境界線は豊田市内を走っています。前者は旭〜足助〜松平の地域から西側の全域を占めますが、稲武地区と下山地区には両種が分布しています。
両種の区別は花以外では難しく、花柄がほとんど分岐せず花冠より短く、その花柄に短毛が散生するのがアキチョウジ、無毛の花柄がよく分岐し花冠よりずっと
長いのがセキヤノアキチョウジです。
したがって、後者では花数は多いもののまばらに咲く感じがします。
今のところ、完全な混生場所は確認していませんが、特に稲武地区の北部・東部では、谷によって生えている種類が異なっている地域があります。
植物の分布域は不変ではなく、気候の変化や周辺の植生の変化などによって、ゆっくりと変わっていきます。現在のアキチョウジとセキヤノアキチョウジの境界線も、100年後には動いているかも知れません。そんな、ゆっくり時間をかけた変化を見極めるためにも、今の分布域を確実に把握しておく必要があります。
|
(2011.10) |
北岡明彦さんを紹介します
1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、
日本全国を飛び回る。 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、
一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。 |
|