バックナンバー
 ■vol.1
 里山が荒れてるって本当?

 ■vol.2
 木を植えることは善・・・?

 ■vol.3
 生物多様性ってなんだろう?

 ■vol.4
 雑木林的思考のすすめ


ブナの若葉の写真
北岡明彦さんを紹介します
1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、日本全国を飛び回る。

名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。その人柄にもひかれて「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。

『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自ページを開いた本のイラスト然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。
■ラブリーアースJapan設立当初から、森林・自然にとどまらず、ものの見方、考え方など貴重なアドバイスをいただいています。

■このコーナーは、みなさんのご質問やご意見をもとに執筆されています。
どんなことでも、お待ちしています。こちらからどうぞ。


 その五 : ナラ枯れ病について想う

 2006年より愛知県でも発生が確認されている「ナラ枯れ病」ですが、昨年より、名古屋市・豊田市・瀬戸市などで急激に被害が増大し、私たちの目にもよく触れるようになりました。その結果、各地でいろいろな防除対策がとられるようになりましたが、残念ながら100%効果的に根絶する方法はありません。

 それは、あたり前の話です。「ナラ枯れ病」はカシノナガキクイムシという体長わずか数mmの日本古来からいる昆虫と、これまた日本中どこにでもいるナラタケ菌の共生によって発生するという、古くから見られる樹病だからです。
 近年、いろいろな樹病が目立っています。30年来の発生をくり返すマツ枯れ病を始め、ミズキ・マンサク・ケケンポナシといった樹種で集団枯死が見られました。いずれも、老木や成木に被害が集中し、幼木はほとんど感染しません。

 こうして考えてみると、何のことはない。今回のナラ枯れも、森の世代交替の一環ではないかと思われます。この地域で集中的に枯れているモンゴリナラとコナラは、ともに自然界での寿命は100年程度で、森林の植生遷移の中では、マツ林の次に成立するやや先駆植生的な面を持った樹木たちです。
 里山の経済的利用が終り、コナラやモンゴリナラが樹齢80年近くになったとたん、ナラ枯れが始まりました。病死も自然死のひとつです。

 公園や人家横にある枯死木は、安全上、伐採処理する必要がありますし、場合によっては予防措置をとる必要のある樹林もあると思われますが、自然林の中では、森の動きにまかせておくのが、最善の措置でしょう。
            


※カシノナガキクイムシによる「ナラ枯れ病」の
 メカニズムについてはこちらをご覧ください。





(2009.07)









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