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その参拾参 : 植物の分布の不思議 (1)ヒトツバタゴ
名古屋市内でも街路樹として良く植えられるヒトツバタゴは、日本の植物相を語るうえで欠かせない植物です。
それは本種が、中国中部〜朝鮮半島〜対馬から飛び離れて、岐阜県東濃地方と愛知県尾張地方に点在して生育するという分布の不思議さが理由です。種子に、カエデやマツのような羽根などがなく、日本海を飛びこえる能力を持たないヒトツバタゴが海を隔てて生育しているという事実は、昔々、日本と大陸が繋がっていたことを証明しています。
つまり、地球史の生き証人が、ヒトツバタゴだということです。
キスミレ・キキョウ・ヤツシロソウ・ヒゴタイのように中国大陸に本居地があって、その分布の端が九州や本州中部以西まで及んでいる植物を総称して、満鮮大陸系要素植物と呼びますが、ウンヌケや本種も同じような存在です。
江戸時代後期に尾張藩の本草学者だった水谷豊文が名付けた、由緒あるヒトツバタゴ(ナンジャモンジャの木という俗称でも知られている)が、地球上から絶滅することなく私達の近くに自然のまま生き続けることを願ってやみません。
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(2011.08) |
北岡明彦さんを紹介します
1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、
日本全国を飛び回る。 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、
一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。 |
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