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その参拾八 : 森の贈り物 縁起木(2)
江戸時代より、上級武家や大商人の庭に、好んで植えられてきた縁起木が2種類あります。
それは、ユズリハとカシワです。
ユズリハは「譲り葉」で、冬を越した古い葉が、新しい葉の展開とともに落葉することから名付けられたと言われています。もちろん、すべての常緑樹が新葉の展開とともに旧葉は落葉しますが、ユズリハは葉が大きくて目立つことから特別に名付けられたのでしょう。万葉集にも登場します。
もう一種のカシワは、武家の庭でよく植えられました。本種は夏緑樹ですが、枯れ葉は樹上でそのまま冬を越し、春に新葉が伸び始めると同時に落葉します。古い葉(先代)があたかも新しい葉(次世代)を見守り、引き継いでいるように見えることから、順調な世代交替を象徴する縁起木になったものです。
花や実が美しい訳でもない、樹形が特別美しい訳でもない樹木を、その呼び名や性質から庭木として好んで植えてきた、日本人の心がなかなか興味深いですね。
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(2011.12) |
北岡明彦さんを紹介します
1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、
日本全国を飛び回る。 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、
一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。 |
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