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その七拾 : 落ち葉ひろいの楽しみ(3)
落ち葉の押し葉作りとともに、落ち葉ひろいの楽しみが、「匂い袋」作りです。
晩秋にブナ林の渓流沿いを歩いていると、時々、お香のようなカラメルを焦がしたような、良い匂いのすることがあります。これはカツラの落ち葉が茶褐色に変色する時の匂いです。
カツラはブナ帯の沢沿いに生える落葉性大高木で、万葉集の時代から「香出(かいず)」と呼ばれており、古来より「お香」の原料として使われてきました。
愛知県では数少ない樹木ですが、岐阜県や長野県の山間部では良く見られ、飛騨市の天生(あもう)渓谷で見られるカツラ巨木林は実に見事です。
10月中旬に天生渓谷は黄葉の最盛期を迎え、林内はカツラの香ばしい匂いに満ちます。ブナの黄葉、カエデ林の紅葉と相まって、最高の気分に浸ることができます。
このカツラの落ち葉を使った「匂い袋」がおすすめです。黄色に変色したカツラの葉を20〜30枚拾って、布製の小袋に入れるだけで完成です。良い香りがしばらく続き、ちょっと霧吹きで少し湿り気を与えると、また匂うようになります。
古人の雅(みやび)を少しだけ感じられます。
一方里山では、タカノツメの黄葉がよく似た匂いを発します。これも晩秋の里山歩きの楽しみのひとつです。
しかし、何とくさい臭いを発する落ち葉もあります。それはウワミズザクラです。若葉や実が杏仁の香りを持つ種類ですが、なぜか落ち葉はいやな臭いを出します。
五感を使った自然観察、本当に楽しいですね。
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(2013.11) |
北岡明彦さんを紹介します
1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、
日本全国を飛び回る。 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、
一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。 |
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