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その参拾四 : 植物の分布の不思議(2) モウセンゴケ
東海地方の丘陵地に点在する規模が小さな湿地たち(東海丘陵湿地と呼ばれる)の植物相は、実に不思議です。
ハナノキ・シデコブシ・シラタマホシクサなど世界中でここにしかない植物、モウセンゴケ・サワラン・ミカヅキグサなど気候的にずっと寒冷地に多い植物、イガクサ・ヒメミミカキグサなど気候的にもっと暖かい所に多い植物が、入り混じって生育しています。
こんな植物相は、他の所では全く見ることができません。
一年中低温で酸性度が高く貧栄養な湧水が流れていることがその理由だと思われますが、多くの植物にとって厳しい生育環境に、ぜい弱な種類の植物が生き残った、又は逃げ込んだと考えるべきでしょう。
食虫植物のモウセンゴケは、本来、尾瀬ヶ原や天生湿原など高層湿原に本拠地がある種類ですが、愛知県では標高わずか100mに過ぎない湿地でも見られます。
もともと湿地は栄養分が少ないため、モウセンゴケ類・ミミカキグサ類・タヌキモ類といった食虫植物が多く生育します。植物にとって厳しい環境は、逆に古くから分布している種類が生き残る場にもなっているようです。
こうした、本来の生育場所とは離れた所にポツンと分布することを隔離分布と呼びますが、東海地方の小湿原は、そうした隔離分布植物の宝庫でもあります。
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(2011.09) |
北岡明彦さんを紹介します
1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、
日本全国を飛び回る。 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、
一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。 |
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