1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、日本全国を飛び回る。
名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。その人柄にもひかれて「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」
「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。
■ラブリーアースJapan設立当初から、森林・自然にとどまらず、ものの見方、考え方など貴重なアドバイスをいただいています。 |
|
武田家の旗印である“風林火山”の中では「静かなること林の如し」とありますが、森からはいろいろな言葉が発信されています。 それを聞き取れるかどうかは、私たち受け取る側の感受性の問題です。
私の担当する、このコーナーでは「どうすれば森のひとり言を聞くことができるか?」のヒントとなるような小話を紹介していきたいと思います。
私たち人間が、自然に対して「良かれと思って行なっていること」が、実は「あまり良いことではない」場合が、しばしばあります。
そのひとつに、無謀な植林があります。
まず、最大の無謀な植林は、経済性が全く見込まれない場所や環境的に成林不可能な場所に植えられた人工林です。
人工林は成林するまで適切な手入れをしない限り、自然環境に大きな悪影響を及ぼします。今、全国的な問題となっている「間伐手遅れ人工林」は、まさにこの事例です。
一方、二酸化炭素吸収による地球温暖化防止の名目も含めて、木を植えることは善だ、という風潮があります。特に、裸地や草地などにシイやカシなどの
極相林の構成種を密植することがはやっています。しかし、これは本当に良いことでしょうか?
自然界の中で極相林は、500年程の長い時間をかけて出来あがるものです。極相林はその構成種や外観だけではなく、そこに住む昆虫を始め多くの動植物や
豊かな土壌、そして豊富な土壌動物を含めて、極相林という素晴らしい森林生態系なのです。
ですから、できれば草地性植物群落から、少なくともアカマツ林から植生遷移を始めていくべきだと思われます。仮に最初は人工的な植栽から始めるとしても、
長い年月をかけて最後には植生遷移に基づき、自然植生の「極相林」に近づけていくべきでしょう。
人の一生は80年、森の一生は800年。森作りには、ゆったりした時の流れが必要です。
人が苗を植えれば、どんな樹木を植えても人工林です。人工林である限りは、いずれ人の手による手入れが必要になります。
ちゃんと最後まで手入れができる所以外は、天然林にしておくのが、やはり良いでしょう!
極相林 : 原生林。クライマックス フォレスト。
その土地で、もし人間の影響がなければ
成立するであろう最後の姿の森。
|
(2009.04) |
|