※このコーナーは、みなさんのご質問やご意見をもとに執筆されています。どんなことでも、お待ちしています。
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その参拾 : 人工林問題について思う −その2−
実際に、現在日本中で起っている人工林問題を解決していこうと考えると、眼前
に累積するさまざまな課題に対処していかなければなりません。
その中でも一番大きなものは、広い意味での社会情勢の変化だと思います。
@なぜ、人工林がこんなに多いのか
・第二次世界大戦後、生活等のエネルギー源が薪や炭から石油や天然ガスに
替わり、最後に薪を採ってからスギやヒノキを植えた。
・同じ時期、農地への肥料が化学肥料になり、カヤ場にスギやヒノキを植え
た。
・もともと経済性のない奥山に森林開発公団(当時)や各県の林業公社(当
時)など行政胆入りの組織が大規模な拡大造林を行った。
→実はこれが非常に大きい!
Aなぜ、林業はもうからないのか
・もともと、日本には木材販売だけで生活している人はごくわずかだったが、
日本の急激な高度成長により、ほんの一時期だけ、むちゃくちゃ儲かったこ
とが、イメージとして忘れられない。
・木材には輸入関税がかかっておらず、今の価格は国際価格で正当なもので
ある。それに対して、人件費や諸物価は大幅に上昇しているが、これは社会
情勢の変化そのもの。
・木材の需用は大天災が続かない限り、人口減少と木造住宅への嗜好の減
少により、国内では大幅に伸びることはない。
・@のとおり、もともと採算性のない所に、非常にたくさん木を植えた。
B国民の考え方はどう変わったのか
・日本経済が急激に上昇していく時期には、多くの国民が「国土保全」の役割
と同じくらい、人工林の持つ「木材生産」機能に期待をしていた。40年位前ま
では・・・。
・現在は、「国土保全」「水資源かん養」「地球温暖化防止」「生態系保全」など
多様な働きを多くの国民は期待しているが、「木材生産」にはほとんど期待し
ていない。
こうした事実をしっかり認識し、理解したうえで、現在正しいと考えられる施策を
考えていく必要があります。何しろ、森林施策を行うには相当額の税金(都市住
民の血税)を投入しなければならないのですから・・・。
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(2011.04) |
北岡明彦さんを紹介します
1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、
日本全国を飛び回る。 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、
一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。 |
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