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その参拾壱 : 人工林問題について想う ―その3―
では、あるべき人工林施策とはどんなものでしょう? 答えは、たったひとつのものではないと思います。
そのひとつの考え方として、木材生産を単なる林業ではなく、人工林管理業に変えることが必要だと思います。
まず、地域の森林の究極的な姿である“環境的・経済的に採算が見込める人工林では、生態系に配慮しつつ再生産可能な木材生産を行い、それ以外の人工林はゆっくり時間をかけて天然林に戻す”という方針をしっかり定め、長い期間を設定して、目標に向かって基本的精神がぶれることなく、着実に施策を進めることが必要です。
途中で社会情勢の変化に伴ない、若干の修正はもちろん必要ですが、基本線を変えないことこそ最も重要です。森づくりは百年の計にあり。
そう基本を定めれば、あとは@一部の人工林では、生態系を大きく壊さない範囲で林業を行って儲け、Aそれ以外の、林業をやっても儲からない所は、本当に良い木(ヘリコプターで搬出しても採算の合うような良材)を混じえた針広混交林を作り上げるという、ふたつの技術を実践していくのみです。
私たち人間の生活を含めた環境保全を考えながら、@は業としての経済性を求め、Aは下流域の受益者の負担(税金投入)を得ながら森林の持つさまざまな働きを保全していく、という2面作戦こそ重要だと思います。
こうした技術を持った人材がどうしても必要となり、結局最後は人作りとなります。
地域全体の森林管理をコーディネートする人、環境と収益のバランスを考えられる人、現場で林業作業を行う人、それぞれの持ち場を高い意欲を持って行える人こそ、地域の宝です。
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(2011.05) |
北岡明彦さんを紹介します
1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、
日本全国を飛び回る。 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、
一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。 |
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