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その五拾七 : 森を楽しむ(春編) その2
春を招く草花といえば、雪割草です。
しかし、雪割草とユキワリソウが違うことをご存知ですか?
漢字の雪割草は園芸上の名前で、標準和名はスハマソウ(キンポウゲ科)です。ミスミソウも同じ種類です。雪国では、雪融けと共に白色〜濃桃色までさまざまな色合いをした6〜9弁の小花を咲かせ、群生地では見事な景観となります。
花びらのように見えているものは萼のため、花は長い間咲きます。
古くから正月盆栽の寄せ植えや早春の鉢物として人気があったため各地で乱獲され、特に濃桃色の花をつける株は、身近な所では採り尽された感があります。
地域変化も大きく、特に愛知県の尾張〜豊田に分布する個体群は、葉が大きく見事な割に花が小さいことが特徴です。
一方ユキワリソウは、サクラソウの仲間(サクラソウ科)です。
自生地は亜高山帯の岸石地や岸壁で、滅多に見ることができない植物です。
高さ5cmくらいの花茎の先に薄桃色の小さな桜型の花を数個咲かせます。
最も容易に観察できるのは白馬村の八方尾根で、ロープウェイとリフトに乗ればハイキング気分でも楽しむことができます。しかし、あくまでも亜高山ですので天候や寒さには要注意です。
八方尾根のユキワリソウは7月に雪が融けた土手や裸地に、次々と咲いていき、本当に可愛らしい姿をしています。
雪割草もユキワリソウも名前と姿の良さから園芸植物として売買されていますが、両種とも基本的には多雪地の植物で空中湿度を好みます。
都市砂漠とも呼ばれる都会の乾燥には非常に弱く、長期間栽培するのはとても困難です。
「やはり野に置け雪割草」山で見つけても、絶対に採集しないようにして下さい。
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(2013.03) |
北岡明彦さんを紹介します
1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、
日本全国を飛び回る。 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、
一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。 |
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