※このコーナーは、みなさんのご質問やご意見をもとに執筆されています。どんなことでも、お待ちしています。
こちら からどうぞ。
|
|
その四拾参 : 地球温暖化と植物
植物は、一般的に動物と比べて移動能力が乏しいことから、急激な地球温暖化への対応力は乏しいようです。そこで、樹木など寿命の長い植物たちは、変化に耐えきることで危機をやり過ごす方法をとります。
各地の巨木の年輪を調べると、気候の変化や環境の変化、台風や火山などの影響を知ることができます。
長い目で見ると、一番影響を受ける植物は、高山植物などの山頂部に生育するグループだと考えられます。温暖化によって、より暖かい地域の植物(イコール成長が速い植物)が少しずつ標高を上げていき、山麓の植物は中腹に、中腹の植物は山頂へと生育区域を移動していきます。その結果、山頂にのみ生育していた寒冷地の植物は姿を消す運命にあります。もっとも、何種類かは岩場など条件が厳しい所で生き残り、また地球が寒冷化するのを待つことでしょう。
地球の歴史はまさに、そうした気候変化のくり返しです。高山植物は今のうちに見ておいたほうがいいかも・・・・。
一方、地球温暖化で、勢力を伸ばしている植物もあります。
それはシダの仲間とランの仲間です。その理由は、どちらも微細で風散布による移動能力が極めて高い繁殖様式を持っていることです。シダの胞子は1mm以下、ランの種子は1〜2mmが普通です。
また、多くの種類は暖帯や亜熱帯といった暖かい所に本拠地があることも有利に働いています。シダではシロヤマシダの仲間、ランではコクランやタシロランで北上が顕著です。
このまま10年も温暖化が続くと、私たちのところで屋久島や奄美大島のシダやランが見られるようになるかも知れません。
嬉しいような悲しいような気がします。
|
(2012.03) |
北岡明彦さんを紹介します
1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、
日本全国を飛び回る。 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、
一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。 |
|