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その五拾九 : 森を楽しむ(春編) その4
春の女神 ギフチョウ
昆虫少年たちの春は、ギフチョウの出現でピークを迎えます。
街中に生息するアゲハチョウの春型に一見似ていますが、色合いが少し濃いほか、飛び方がゆっくりしていて、朝方には、よく地上や葉上に止まります。
幼虫は「春編その1」で紹介したカンアオイ類を唯一の食草として育ち、蛹で越冬した後、 成虫は年1回4月上〜中旬にのみ出現します。一生のうち、大半の期間を蛹で過ごすという生活史をしていますが、これはギフチョウ類2種の他、
コツバメ・ミヤマセセリなど早春に年1化の新成虫が出るチョウの特徴です。
ギフチョウ属はアゲハチョウ科に属し、東アジア特有のグループです。日本には広分布種のヒメギフチョウと日本特産種のギフチョウが分布し、
愛知県など西日本の太平洋側にはギフチョウだけが生息しています。前者は暖温帯性で、夏緑性のウスバサイシン
(これもカンアオイと同じウマノスズクサ科カンアオイ属)を食草とし、北方系・大陸系の昆虫です。
ギフチョウは、地球が間氷期に入って温暖化し日本が大陸から分離した後、暖地を好む常緑性のカンアオイ類が分化・繁茂すると同時に、
ヒメギフチョウから新しい種類に分化したものだと思われます。
日本固有種が多いカンアオイ類と日本固有種ギフチョウの組み合わせは、まさに「日本の春」です。
しかし、日本固有の稀産種であるが故に、一部昆虫愛好家といわれる輩の採集の的となったり、標本収集家やそのためのバイヤーの標的になることが多く、
世界の昆虫標本販売界では高値で売買されています。
本種は深山の昆虫ではなく、人里に近い里山にすむ昆虫です。
いつまでも、ギフチョウが舞う里山の風景が残るといいですね・・・・。
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(2013.04) |
北岡明彦さんを紹介します
1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、
日本全国を飛び回る。 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、
一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。 |
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