散 歩 道




石垣島 西表島

大阪関西空港から飛行機で2時間ほど。台湾にほど近く、10月も半ばだが最高気温が30度を超え、夜中も26度程の真夏日であった。
石垣島での3泊、西表島での1泊の間に見た生き物などを緩く紹介していく。

石垣空港から車で街に出るまではサトウキビ畑とパイナップル畑、牧草地が続く。どうやら平地のほとんどは農地として利用されているようだ。農地環境であり、外国産の牧草なども育てているためか外来種が非常に多かった。しかし、最近ガクタヌキマメ(絶滅危惧1A類)が47年ぶりに発見されたりと環境としてのポテンシャルは非常に高いと思われる。

樹林は照葉樹が主体だがヤシや松、木生シダが生える混合林を呈している。林内の樹木は太さの割には樹高がそこまで高くない木が多い。折れた枝の様子などから、台風によるものだと思われる。上に高く伸びず、横に広がったリュウキュウマツが樹林にたたずむ様子はあまりなじみがなく違和感を覚える。
放牧地と照葉樹と松の混合林

↑ヒカゲヘゴ
木生シダの一種、高いものでは10 mを超える。

←リュウキュウマツ(直径1 m以上)
上にまっすぐ伸びず、樹冠が広がる。初見時は幹の様子からクスノキかと思ったほど。

海浜部はサンゴ礁が隆起した琉球石灰岩(左)があり、植生もやや変化する様であった。
山間部ではボチョウジ(中)、海浜部ではナガミノボチョウジ(右)と近縁種でも地質の違いですみ分けているものもあった。
浸食に弱い石灰岩は平地に多く山は別の岩石で形作られているため、地形からも植生の違いに触れられるかもしれない。
照葉樹林の構成樹種はイチジク属が多いように見えた。森林内ではイチジク属のギランイヌビワ、ホソバムクイヌビワ、オオバイヌビワ(上段)などが見られた。特にギランイヌビワは幹から花が咲き実がなる幹生花で株本では板根(左下)が発達する、どちらも亜熱帯-熱帯で見られる特徴的な形態である。
イチジク属の植物が他の樹木に巻き付いている様子もみられた。鳥などが運んだ種が樹木の枝の上で発芽し、伸ばした気根が幹を伝って伸びることでこのような形になる。根による締め付けと元の木を支柱代わりに葉を伸ばし、樹冠を覆う事で最終的には元の木を枯らしてしまう。やがて元の木が朽ちると右下の写真様に気根を伸ばし、真ん中に隙間の空いた奇抜な樹形になる。このような植物を絞め殺し植物と呼ぶ。
イチジク属だけでもかなりの多様性がありとても楽しめた。
河口部や砂泥質の海岸の一部はオヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギ(上段)などからなるマングローブ林が見られる。特に西表島の浦内川河口にあるマングローブ林(左下)は広大で、奥の山際までマングローブ林が続いており、浦内橋からみられる景色は圧巻であった。
マングローブ林内は暗く、呼吸根や支柱根が至る所から出ており、場所によっては地面がぬかるみ沈むためとても歩きにくかった(中下)。マングローブ林を散策する場合はカヌーやカヤックをお勧めしたい。
個人的に見たかった植物のミミモチシダ(右下)が見られてよかった。日本で見られるイノモトソウ科のシダの中でも最大級(1 m程)であり汽水に生息する点も特異的である。葉裏が茶色いものはソーラス(胞子嚢)がびっしりと付いているため。

オオクイナのロードキル
石垣島では写真のような生物のロードキルが良くみられた。自然もさることながら人も多いので、やはりこのような不幸な事故も多いようだ。
事故情報としてイリオモテヤマネコやカンムリワシなどがフォーカスされることが多いが、路上で死んだ生物を食べにこれらの生物が道路へ来て事故に遭うこともあるので、生物へ配慮した運転をしていきたい。

今回の石垣島、西表島では本州であまり触れることのできない亜熱帯-熱帯の特色のある生物、大陸性の生物、八重山諸島特有の生物を多く見ることができた。
今回は石垣島を主として歩いたので、次回があるなら西表の山中もガイドとともに歩いてみたい。

その他観察物
前半植物
後半その他動物




漢字表記一覧表
種名 漢字 備考
リュウキュウマツ 琉球松 マツ 巨木が多いが、台風の影響かあまり背が高くない。
ヒカゲヘゴ 日陰杪欏 ヘゴ 日本の木生シダの中では最大サイズ。着生植物の栽培用の板、民家の飾り柱、食用など様々な方向で利用される。
ボチョウジ 母丁字 アカネ 常緑樹林の林床に生える。クスノキの様に葉脈の基部にダニ室がある。クチナシを連想させる見た目をしている。
ナガミノボチョウジ 長実の母丁字 アカネ 石灰質の土壌に生える。実の形状や葉の広さなどアオキを連想させる。
ギランイヌビワ 宜蘭犬枇杷 クワ 幹生花と板根が特徴的。
ホソバムクイヌビワ 細葉椋犬枇杷 クワ 葉には毛が生えておりややざらつく。ハマイヌビワと似るが葉のざらつきと実の付き方から区別できる。
オオバイヌビワ 大葉犬琵琶 クワ 葉が大きく、やや潰れたような実を着ける。見た目は葉脈がはっきりしたのゴムノキといった感じ。
オヒルギ 雄蛭木 ヒルギ 花の形状で見分けるのが最もわかりやすい。萼が赤くタコの様。
メヒルギ 雌蛭木 ヒルギ 花の形状で見分けるのが最もわかりやすい。萼片が5枚の白い花。
ヤエヤマヒルギ 八重山蛭木 ヒルギ 花の形状で見分けるのが最もわかりやすい。萼片が4枚の白い花。
ミミモチシダ 耳持羊歯 イノモトソウ 和名は学名の誤訳から。汽水域に生える変わったシダ。葉の長さが1 m程とかなり大型
オオクイナ 大水鶏 クイナ 赤っぽい顔と腹の縞模様が特徴的。有名なヤンバルクイナは飛ばないが、飛ばないクイナの方が稀。
イリオモテヤマネコ 西表山猫 ネコ 天然記念物。今回は見ることはできなかった。
カンムリワシ 冠鷲 タカ 天然記念物。羽根はいくつか確認した。
アメリカスズメウリ 亜米利加雀瓜 ウリ クロミノオキナワスズメウリに似るが葉の切れ込みが深いことから本種と判断。花での判断が容易、本種は黄色い。北アメリカ原産の外来種
アワダン 三葉蜜茱萸 ミカン 漢字名は一般的なものがないので中国名から。その名の通り三出複葉のミカンの仲間。
イリオモテムラサキ? 西表紫 シソ 葉の鋸歯が荒く、オオムラサキシキブと比べ小型なことから判断。オオシマムラサキの変種。
オオムラサキシキブ 大紫式部 シソ ムラサキシキブと比べ葉が大きく幅広く、実付きが良い。
オキナワウラジロガシ 沖縄裏白柏 ブナ 果実が非常に大きく、直径2.5-4 cm、重さ15-20 gとドングリのなかでは日本最大。
オオシマコバンノキ 大島小判の木 コミカンソウ 石灰質の土壌で生育し、オオシマコバンノキハナホソがによってのみ花粉が媒介され結実する。小石川植物園で展示されている。
シバニッケイ 柴肉桂 クスノキ マルバニッケイに近いがそれほど葉が丸くならない。
ショウロウクサギ 松露臭木 シソ 若い枝には白い毛が生えており、葉が心形をしている。クサギの変種。
スナヅル 砂蔓 クスノキ 海岸に生えるクスノキ科の寄生植物。寄生根によって絡みついた植物から養分を強奪する。生活系としてはネナシカズラに似る。ちぎって臭いをかぐと樟脳の香りがする。
タイワンクズ 台湾葛 マメ クズより葉が細長く切り込みが入らない。花序が細長く、花の色が淡いことからも区別できる。
タイワンコモチシダ 台湾子持ち羊歯 シシガシラ 和名は葉から出る無性芽から。無印よりも大型で新芽が赤くなることが本種の特徴。
ナガバカニクサ 長葉蟹草 カニクサ 蔓性のシダ植物。カニクサよりも葉の先端が長く伸び、シャープな印象がある。
ヌマノオ 沼尾 イラクサ オオイワガネとも言う。本州ではあまり見られないイラクサ化の木本。
ノボタン 野牡丹 ノボタン 熱帯性の低木。葉が特徴的なので初見でもわかりやすい。
ハマセンダン 浜栴檀 ミカン 樹形などいカラスザンショウに似るが、棘がなくやや枝が多い。どちらかというとゴシユウに近い。
ホンゴウソウ類 本郷草類 ホンゴウソウ 菌類に寄生する菌類従属栄養植物。透明な赤色で数㎝程。雄花の形状から分類できるが、今回は咲いていなかったので類としてお茶を濁す。
ヒハツモドキ 蓽撥擬き コショウ 別名ジャワナガコジョウ。生薬や香辛料として栽培される。島では島胡椒、ピパーツ、ヒバーチとして卓上調味料としてよく見られた。東南アジア原産。
フウトウカズラ 風藤葛 コショウ 本州にも分布するコショウの仲間。辛味はないがコショウのような香りがする。
ミフクラギ 目脹ら木 キョウチクトウ マンゴーにも似るが猛毒の木。名前は樹液が付いた手で目をこすると腫れることから。
ヤエヤマネコノチチ 八重山猫の乳 クロウメモドキ イソノキと同様に2枚ずつ左右に葉が出るコクサギ型葉序をしている。
ヤエヤマヤシ 八重山椰子 ヤシ 葉鞘に光沢があり漆器の様で、世界で最も美しいヤシと言われるらしい。実は小さくドングリのような形をしている。
ヤンバルアカメガシワ 山原赤芽柏 トウダイグサ ブドウやボダイジュのような雰囲気の葉をつけ、芽が赤くならないためアカメガシワとあまり似ていない。
リュウキュウイナモリ 琉球稲森 アカネ 林床で目を引く植物。イナモリソウと比べるとかなり大型で花も多く、実の形状も変わっている。イナモリソウとは属が違う。
リュウキュウツワブキ 琉球石蕗 キク ツワブキと比べ葉が薄く、鋸歯が大きい。渓流部では葉がクサビ形になるらしい。
リュウキュウハリギリ 琉球針桐 ウコギ なんとなくハリギリと違う雰囲気があるが言語化できない。
アオミオカタニシ 青身陸田螺 ヤマタニシ つぶらな瞳と若葉色の体が可愛らしいカタツムリ。葉の上の藻類やサビ病などのカビを食べる。
アシヒダナメクジ 足襞蛞蝓 アシヒダナメクジ ナメクジとはまた違った進化の先にある生物。イソアワモチなどが近縁らしい。アフリカ原産。
イシガキトカゲ 石垣蜥蜴 トカゲ 本州で見られる二ホントカゲとよく似ており、筆者は判別がつかなかった。生息地より判断。
オオゴマダラ 大胡麻斑 タテハチョウ 食草のホウライカガミに毒があるため、蓄積毒を持つ。そのため有毒生物特有の捕食を恐れないかのようなゆったりとした動きをする。
オオシママドボタル 大島窓蛍 ホタル 日本最大級のホタル。カタツムリが多いためかそこら中で見られた。幼虫も発光する。
オオジョロウグモ 大女郎蜘蛛 ジョロウグモ 日本最大のクモと言われる。その大きさは親指サイズを超える程。小鳥を捕食している写真が有名。
クマドリオオギガニ 隈取扇蟹 イソオオギガニ マングローブ林に生息するやや大型のカニ。体が紫色で目とハサミが赤い。
クロカタゾウムシ 黒堅象虫 ゾウムシ 最も硬い昆虫。硬すぎて標本用の針が刺さらず、踏まれても無傷。体内の細菌によってこの硬さを得ているとこがわかった。
コブナナフシ 瘤七節 コブナナフシ ナナフシと付くがコノハムシと近縁の虫と以前はされていたが今はDNAにより新たにコブナナフシ科に分類された。
サキシマカナヘビ 先島金蛇 カナヘビ 緑色が美しいカナヘビ。本州のニホンカナヘビと比べやや樹上性。
サキシマキノボリトカゲ 先島木登り蜥蜴 アガマ 樹上で生活し、足が速くジャンプもするためなかなか写真が撮り辛かった。
サキシママダラ 先島斑 ナミヘビ 黄土色の地に黒っぽい丸模様がつらなる無毒の蛇。今回はこの蛇しか見られなかった。
タイワンクツワムシ 台湾轡虫 キリギリス なぜか愛知県にも分布するクツワムシ。
タイワンサソリモドキ 台湾蠍擬き サソリモドキ 世界3大奇虫の一種。刺激すると尾部の管から酢酸を含む毒液を噴射する。
タカサゴシロアリ 高砂白蟻 シロアリ 頭の尖った兵士アリが特徴的。またスズメバチのような巣を樹上に作る。
チュウダイズアカアオバト 中大頭赤青鳩 ハト 頭赤というが頭は赤くない。アオバトと違いはどこなんだ?
ツマグロスズメバチ 端黒雀蜂 スズメバチ 熱帯のスズメバチ。バナナの花でよく観察された。
トビハゼ 跳鯊 ハゼ 干潟に生息し、地上をはねて移動する魚類。ペット人気もある。
ヒメアマガエル 姫雨蛙 ヒメアマガエル 日本最小の蛙2-3 ㎝程。菱形のような独特な体形をしている。
ヒルギササキリモドキ 蛭木擬笹切 ササキリモドキ マングローブを代表する直翅類3種の中の一種。足に生えるとげが特徴的
マングローブスズ マングローブ鈴 ハバキリモドキ マングローブを代表する直翅類3種の中の一種。5 mm程と非常に小さい。
ミナミオカガニ 南陸蟹 オカガニ サワガニを大きく分厚くした様な見た目のカニ。甲羅の大きさが10 cm程ある。
ヤエヤマオオコウモリ 八重山大蝙蝠 オオコウモリ 夜中に木の実がなっている木を見に行けば大体は見ることができる。テリハボクとギランイヌビワの木でよく見ることができた。写真はテリハボクの木より。天然記念物
ヤエヤマセマルハコガメ 八重山背丸箱亀 イシガメ 腹部の甲羅の構造が特殊で蝶番のように動き、甲羅と甲羅が合わさり箱の様に体を守る。天然記念物。
ヤエヤマトガリナナフシ 八重山尖七節 ナナフシ 恐らく石垣で最もよく見られるナナフシ。オオバギなどの柔らかな広葉樹の木でよく見られる。
ヤエヤマムラサキ 八重山紫 タテハチョウ 光の加減によって構造色により青く光る。ヌマノオの葉が幼虫の食草。







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