散 歩 道



小笠原諸島 父島

おがさわら丸に乗って東京竹芝から24時間。台風もあり心配でしたが小笠原父島に到着。
ここから、小笠原丸が東京に出発するまでの3泊4日の間の小笠原散策をゆるく紹介していく。

車で移動していると草地や背の低い樹木林を頻繁に見かける。標高が高いところで見られるような低木林が、薄い土壌による乾燥と強い海風によって形成されている。特にシマイスノキを主体とする低木林を乾燥低木林(狭義)と言い、小笠原を象徴する植生である。
草地は斜度の急な面や土壌が発達していない環境に多い。
小笠原の地質は海水により急速に冷やされてできた玄武岩質の枕状溶岩が特徴。
花崗岩などと比べると風化が遅く土壌が形成されにくい。海岸や道路の岸壁などでよく見られる。
草地は主にムニンテンツキ(固有)、ムニンススキ(固有)、クロガヤなどで構成されている。
乾燥低木林はシマイスノキ(固有)、コバノアカテツ(変異)、シマムロ(固有)、テリハハマボウ(固有)、ムニンアオガンピ(固有)、タチテンノウメ(固有)、ムニンネズミモチ(固有)などの常緑樹を主体とし、尾根などでは1 m程の高さでミニチュアの様な樹林を形成している。尾根以外の環境では普通に成長し葉も大きくなる。

小笠原は自然に流入、定着してきた植物の種数が少ないためか、競争力が強い外来種の被害が大きいように見えた。独自の豊かな自然も残っているが、外来種に浸食された環境も多くみられた。ここでは植生に大きな影響を与えている樹木を2種とその影響をあげる。
トクサバモクマオウ
針葉樹の様に見えるが被子植物である。小笠原では海岸から山頂など広くみられ、モクマオウ林を形成するところもある。モクマオウ林では特徴的な葉が堆積し、トクサバモクマオウが優占する単調な森になる。
アカギ
やや湿った場所を好む常緑高木。小笠原では高木林に侵入し、乾燥低木林では全く見られない。在来種よりも成長が早く耐陰性もあるため、高木林ではトクサバモクマオウ同様の単調な森を作る。
これら2種は駆除も行っており、島によっては根絶できたところもあるようだ。
その他にも、植物に大きな影響を与えるノヤギ、昆虫類に大きな影響を与えるグリーンアノール、オオヒキガエル、陸貝類に大きな影響を与えるニューギニアヤリガタリクウズムシなどまだまだ島に影響を与えている外来種は多く存在し、それらの姿や痕跡が今回の島の散策で至る所で見られたのは残念だった。いつかは人の手によって、島固有の生態系が戻ることを期待したい。

・コラム 冠名
生物の和名には発見場所、地域の特有種、エピソードなどによって由来する冠名が付く場合がある。例えば東海地方であればトウカイタンポポ、トウカイコモウセンゴケ、トウカイヨシノボリ、トウカイコガタスジシマドジョウなどの東海を冠する種があり、愛知県ではミカワバイケイソウ、ミカワオサムシ、オワリセンダングサ、オワリサンショウウオなどの三河や尾張を冠する種もある。より狭い範囲の冠名ではナゴヤダルマガエルなどもある。
多くの場合、島の固有種は島名が冠名になることが多い。当然小笠原の固有種はオガサワラを冠名につける種もあるが、それ以外にもいくつかの冠名がある。主に小笠原ではオガサワラとムニン、シマの三つの冠名が使われる。また、島ごとに固有の種ではチチジマ、ハハジマ等を冠する種もある。
小笠原で主に使われる冠名の内で最も多く使われているのはムニンである。これは小笠原と呼ばれる以前に無人島と呼ばれていたことが関係しているようで、その無人からきているそうだ。詳しくは島の歴史などを見てみると面白いかもしれない。
また、シマはかなり広く使われる冠名なので小笠原特有の種だと考えるには注意が必要である。例えば沖縄、屋久島、奄美大島などの島や北海道(例:シマエナガ)などでも使用され、広域分布種も含まれるので注意が必要である。

その他観察物
固有種赤色
外来種青色



漢字表記一覧表
種名 漢字 分布 備考
ムニンテンツキ 無人天突 カヤツリグサ 固有
ムニンススキ 無人薄(芒) イネ 固有
クロガヤ 黒茅 カヤツリグサ 広域分布
シマイスノキ 島柞木 マンサク 固有 乾燥低木林を象徴する
コバノアカテツ 小葉ノ赤鉄 アカテツ 固有? アカテツの変種、アカテツと遺伝的(核SSR)な差は確認できない
シマムロ 島榁 ヒノキ 固有
テリハハマボウ 照葉浜朴 アオイ 固有
ムニンアオガンピ 無人青雁皮 ジンチョウゲ 固有
タチテンノウメ 立天ノ梅 バラ 固有
ムニンネズミモチ 無人鼠黐 モクセイ 固有
トクサバモクマオウ 木賊(砥草)葉木麻黄 モクマオウ 外来種
アカギ 赤木 コミカンソウ 外来種
ノヤギ 野山羊 ウシ 外来種
グリンアノール イグアナ 外来種
オオヒキガエル 大蟇蛙 ヒキガエル 外来種
ニューギニア
ヤリガタリクウズムシ
ニューギニア槍型陸渦虫 リクウズムシ 外来種
トウカイタンポポ 東海蒲公英 キク
トウカイコモウセンゴケ 東海小毛氈苔 モウセンゴケ
トウカイヨシノボリ 東海葦登 ハゼ
トウカイコガタスジ
シマドジョウ
東海小型筋縞泥鰌 ドジョウ
ミカワバイケイソウ 三河梅蕙草 ユリ
ミカワオサムシ 三河筬虫 オサムシ
オワリセンダングサ 尾張栴檀草 キク
オワリサンショウウオ 尾張山椒魚 サンショウウオ
ナゴヤダルマガエル 名古屋達磨蛙 アカガエル
シマエナガ 島柄長 エナガ
ムニンシャシャンボ 無人小小坊 ツツジ 固有 葉裏の葉脈に出っ張りがない
ムニンシラガゴケ 無人白髪苔 シラガゴケ 固有
ムニンシダ 無人羊歯 チャセンシダ 広域分布 日本では小笠原のみ自生
イワホウライシダ 岩蓬莱羊歯 ホウライシダ 固有
ムニンタツナミソウ 無人立浪草 シソ 固有 草丈が20 cm程ある
ムニンヒメツバキ 無人姫椿 ツバキ 固有
コクラン 黒蘭 ラン 外来種 全く知らない植物が生える森の中で見つけ、安心感を覚えた
ムニンツツジ 無人躑躅 ツツジ 固有 自生株は1本のみ
オガサワラシコウラン 小笠原指甲蘭 ラン 固有
オガサワラタマムシ 小笠原玉虫 タマムシ 固有 クワノハエノキ(元ムニンエノキ)に集まっていた。天然記念物
ヤコウタケ 夜光茸 クヌギタケ 広域分布 夜間に発光する
スズメタケ 雀茸 キシメジ 広域分布 夜間に発光する
オカヤドカリ 陸宿借 オカヤドカリ 広域分布 広義。小笠原では6種確認されている。天然記念物
オガサワラオオコウモリ 小笠原大蝙蝠 オオコウモリ 固有 天然記念物
メノウ鉱石 瑪瑙鉱石 海岸で拾える








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