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森のひとり言
■vol.1 〜 ■vol.100
森のひとり言・New
■vol.101
原点に帰って、人工林と天然林(1)
■vol.102
原点に帰って、人工林と天然林(2)
■vol.103
原点に帰って、人工林と天然林(3)
■vol.104
原点に帰って、人工林と天然林(4)
■vol.105
原点に帰って、人工林と天然林(5)
■vol.106
原点に帰って、人工林と天然林(6)
vol.107
日本の森林は素晴らしい
■vol.108
自然のしくみを楽しもう(1)
■vol.109
自然のしくみを楽しもう(2)
■vol.110
自然のしくみを楽しもう(3)
※このコーナーは、みなさんのご質問やご意見をもとに執筆されています。どんなことでも、お待ちしています。
こちら からどうぞ。

 その壱百拾壱 : 自然のしくみを楽しもう(4)

 山道を走って面の木峠(1、100m)まで上がると、日本の暖温帯落葉広葉樹林を代表するブナ-ミズナラ林となります。

 さらに、尾根にはモミとツガなど、沢ではサワグルミやトチノキなどが混じり、本当に生物多様性に富んだ日本固有の森林が残っています。

ブナ林(暖温帯性の落葉広葉樹林)右側の未だ葉が出ていない大木はミズナラ、葉が出始めているのはブナ
場所:豊田市稲武町面の木峠
標高:1,100m

 しかし、本当の原生林は、わずか30ha位しか残っていないうえ、野生ブナの寿命である400年に近い老木が多く、今後の動向が心配されます。

 最後に、茶臼湖畔の駐車場から山頂を目指して歩いて登ります。山頂近くに達すると、ブナとウラジロモミが混じった原生林がほんのわずかに見られます。
 このウラジロモミ林は、愛知県に自生する森林の垂直分布における最も高標高地域に分布する森林です。ウラジロモミは低地に生育するモミと比較すると、名前の通り葉の裏が白いこと、球果(マツボックリ)の鱗片が青紫色をしているのが特徴です。山頂からは眼前に南アルプスが広がります。


 このように、愛知県では標高が上がるにつれて、シイ-アラカシ林〜シラカシ-モミ林〜ブナ-ミズナラ林〜ウラジロモミ林と順々に変化していき、これを「森林の垂直分布」と呼びます。
暖温帯性のブナ林から冷温帯性のオオシラビソ林への移行
 下の方は若葉が出始めたブナ林、山頂近くは常緑針葉樹のいオオシラビソ、中間には未だ葉が出ていないダケカンバが交る
場所:飛騨市籾糠山山頂の標高:1,745m

 「美しい花を楽しむ」「珍しい植物を見る」「貴重な植物を大切にする」といった個々の植物種を楽しむことも大切ですが、それ以上に「森林を楽しむ」「森林を知る」「森林を大切にする」という大局的な見方を重要視する必要があります。
 全体の環境が保全できなければ、個々の動植物も生き残ることはできません。
 だからこそ、「木を見て森を見ず」にならないように心がけましょう。


(2020.04)






北岡明彦さんを紹介します
 1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、 日本全国を飛び回る。
 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、 一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
ページを開いた本のイラスト  『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。










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