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森のひとり言
■vol.1 ~ ■vol.100
森のひとり言・New
■vol.101
原点に帰って、人工林と天然林(1)

■vol.102
原点に帰って、人工林と天然林(2)
※このコーナーは、みなさんのご質問やご意見をもとに執筆されています。どんなことでも、お待ちしています。
こちら からどうぞ。

 その壱百参 : 原点に帰って、人工林と天然林(3)

 本来は森林所有者の財産となるはずの人工林が、なぜお荷物になってしまったのでしょう?
 そこには、いろいろな問題が内在しています。細かく分けるときりがない程ですが、そのうち何点かを上げてみます。

 ①植栽してから最終収穫までに、当初予定でも50~60年(今では80年以上)を要し、経済の理論にもともと当てはまらない。

 ②植栽後50年の間に、主たる支出(経費)である人件費は10倍に上昇したのに対して、唯一の収入である木材価格は50年前と同じ水準(一時的に高騰した時期はあったものの)であり、完全に当初の見込みと違う。

 ③日本人の総人口は減少期に入り、木材が最も高価に取引きされる建築用材の需要は今後も見込めない。

 ④森林所有者の所有森林面積は零細であり、一度伐採すると再造林したとしても50年以上無収入となるため、緊急の事態が発生しない限り伐採はしない。
そのため、原木の安定供給は極めて難しい。

 ⑤現在の生産方式を使う限り、利用間伐では1万円/㎥以上、皆伐でも5千円/㎥以上かかる。燃料としての木材は5千円/t程度であり、それだけでは、もともと採算性はない。かと言って、森林作業の従事者の待遇は現在でも極めて悪く、これ以上の値下げは無理。

 一方、山から伐り出した原木を柱や板にする製材工場はスケールメリットを求めて年々大規模化し、原木の安定供給を求めているため、小規模森林所有者の伐採希望とは合わない面があります。どうしても安く安定的に国産材を供給しようとすれば、各地で小規模とはいえないような皆伐が進む可能性があります。これは集中豪雨や台風時に大きな災害が発生する危険性を高めることになります。


 日本の木材生産は、30年以上も前から長い長い先の見えないトンネルに入った状態が続いています。その間、多くの人工林は放置され、間伐が手遅れになりつつある森が増えています。地球温暖化により熱帯型気候になりつつある現在、私たちは木材生産(林業)目的ではない、公益的機能を重視した人工林づくりが必要だと思われます。


 
※人工林間伐の模式図の画像をクリックすると pdf でご覧になれます。









北岡明彦さんを紹介します
 1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、 日本全国を飛び回る。
 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、 一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
ページを開いた本のイラスト  『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。





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