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森のひとり言
■vol.1 〜 ■vol.100
森のひとり言・New
■vol.101
原点に帰って、人工林と天然林(1)
■vol.102
原点に帰って、人工林と天然林(2)
■vol.103
原点に帰って、人工林と天然林(3)
■vol.104
原点に帰って、人工林と天然林(4)
※このコーナーは、みなさんのご質問やご意見をもとに執筆されています。どんなことでも、お待ちしています。
こちら からどうぞ。

 その壱百五 : 原点に帰って、人工林と天然林(5)

 2005年から矢作川流域で始まった「矢作川流域森の健康診断」は、市民が人工林の中に足を踏み入れて、その管理状態の良し悪し(健康状態)を調査するもので、2014年に10回連続開催して終了しました。
 それを発展させたのが、2015年から3年間実施した「あさひ森の健康診断」です。大きく進歩したポイントは、次の4点です。
 @森林所有者など旭地区の住民を中心に運営する、A調査森林の所有者を特定して参加を呼びかける、B天然林も調査する、C3年間実施後に旭地区の森林管理に関する提言をまとめる。

 私はこれら13回のうち12回参加し、主として「自然観察サポーター」と「植物鑑定団」を担当しました。「自然観察サポーター」は調査班の班員への自然解説を、「植物鑑定団」は参加各班が持ち込んだ植物を解説して、それぞれの班が調査したポイントの植生の特徴を知ってもらう役割です。「植物鑑定団」はいつも時間不足で、すべての調査班の要望に対応できず、消化不良に終わりました。

 「あさひ森の健康診断」では3年間とも天然林調査班を担当し、地区内の優れた天然林である伊熊神社のモミ−ウラジロガシ林、旭高原のコナラ林、日下部町のシラカシ林を調査しました。これらの天然林調査は、今後人工林の間伐が進んで針広混交林になったり、皆伐後に天然林化した時にどのような森が成立するかを推測するもとになります。

 3年間の調査を終え、これから提言をまとめていく作業に入りますが、経済的価値が無くなった人工林の管理は所有者だけでは担えないのが現状で、やはり地域全体の課題として、都市住民や行政も巻き込んだ意見交換が必要となります。
 木材を販売する価値以外の新しい価値や楽しみを捜すことや、今ある木材をどう活用するか(伐った木を地面に置いておき、土砂流失を防いだり肥料として活用することも含めて)なども、みんなで検討しなければなりません。どんな提言ができあがるか、メンバーの一員としてとても楽しみです。

(2017.07)






北岡明彦さんを紹介します
 1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、 日本全国を飛び回る。
 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、 一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
ページを開いた本のイラスト  『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。







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