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森のひとり言
■vol.1 ~ ■vol.100
森のひとり言・New
■vol.101
原点に帰って、人工林と天然林(1)
■vol.102
原点に帰って、人工林と天然林(2)
■vol.103
原点に帰って、人工林と天然林(3)
※このコーナーは、みなさんのご質問やご意見をもとに執筆されています。どんなことでも、お待ちしています。
こちら からどうぞ。

 その壱百四 : 原点に帰って、人工林と天然林(4)

 前回まで、人工林の課題を説明してきましたが、それでは、天然林はどのような現状にあるのでしょう。

 全森林における天然林の割合は、全国では59%を占めているのに比べて、愛知県では36%に過ぎません。しかも、本当の原生林(200年以上ほとんど人の手が入っていない天然林)は、天然林の0.1%にも及びません。県内で300年生以上の天然生樹木だけがまとまって生える林分は、設楽町の段戸裏谷、豊根村の茶臼山山頂付近、豊田市の面ノ木峠と伊熊神社以外ではほとんど見ることができません。

 残る天然林の大半は、戦後まで人との関わりが深かった二次林です。何度もくり返し伐られた場所にはアカマツ林(海岸に近いごく一部の場所ではクロマツ林)、その頻度が少ない所ではコナラ-アベマキ林が多く見られます。
 これらの二次林は植生遷移という森林の基本的な仕組みにより姿を変えていきます。100年単位の時間をかけて、暖帯ではアカマツ林はコナラ-アベマキ林に、コナラ-アベマキ林はアラカシ-シラカシ林に、アラカシ-シラカシ林はツブラジイ-ツクバネガシ林(海岸近くではスダジイ-タブ林)に変わり、温帯林ではアカマツ林からミズナラ林を経てブナ-ミズナラ林に移り変わっていきます。
 愛知県では30年程前に大発生したマツ枯れ、10年程前に大発生したナラ枯れは、樹命に近い老齢化した前生樹たちが、次の世代の樹木たちにバトンタッチする方法だったのです。

 今、天然林は急速に姿を変えつつ
あります。
 そのうち、愛知県内の森林で最も
心配なのは、ブナ林の行方です。
 段戸裏谷や面ノ木峠のブナ原生林
のブナたちは、いづれも樹齢400年
に達し、まさに樹命が尽きようとして
います。
 理論的には、極相林の主要樹種の
稚樹は日陰に強く、次の世代も同じ樹種
が優占することにより、極相林はずっと続くことになっています。
 しかし、県内のブナ林では、400年間に気候が大幅に変化したことが主な要因で、稚樹が全く育っていません。
 今、高木層を占めているブナが全滅した時、愛知県のブナ林はいったいどうなるのでしょう?








北岡明彦さんを紹介します
 1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、 日本全国を飛び回る。
 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、 一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
ページを開いた本のイラスト  『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。







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