バックナンバー
森のひとり言
■vol.1 〜 ■vol.100
森のひとり言・New
■vol.101
原点に帰って、人工林と天然林(1)
■vol.102
原点に帰って、人工林と天然林(2)
■vol.103
原点に帰って、人工林と天然林(3)
■vol.104
原点に帰って、人工林と天然林(4)
■vol.105
原点に帰って、人工林と天然林(5)
■vol.106
原点に帰って、人工林と天然林(6)
vol.107
日本の森林は素晴らしい
■vol.108
自然のしくみを楽しもう(1)
■vol.109
自然のしくみを楽しもう(2)
■vol.110
自然のしくみを楽しもう(3)
■vol.111
自然のしくみを楽しもう(4)
※このコーナーは、みなさんのご質問やご意見をもとに執筆されています。どんなことでも、お待ちしています。
こちら からどうぞ。

 その壱百拾弐 : 自然のしくみを楽しもう(5)

 かなり間が開いてしまいましたが、前回の続きで「植物の水平分布」について解説しましょう。

 「水平分布」とは、読んで字の如く、同じ標高帯の植物相が東西南北によって、どのくらい異なるかを表わしたものです。簡単に言えば、海岸の砂浜に生える植物を沖縄県の西表島から、順に北上していって北海道の礼文島まで観察して、その変化を調べれば理解できます。

 まず、西表島の星砂の浜。3月24日に訪ねた浜は名前通り星砂で敷きつめられていて、近くの星立保護区では、グンバイヒルガオ・ハマボッス・スナズルの花が3月なのに咲き、ハマヒルガオやイリオモテアザミもありました。
 そして、日本の真ん中、愛知県の田原市渥美の西の浜を5月21日に訪ねた時には、目的のハマウツボに加えて、ハマヒルガオ・ハマエンドウ・ハマボウフウ・ハマニガナなどが咲いていました。
 また、北の端、北海道の礼文島の知床(すことん)海岸では、7月15日に、ハマナス・ハマベンケイソウ・ハマハコベ・ハマボウフウ・レブンソウにハマヒルガオがたくさん咲いていました。海岸の岩場にはゴマフアザラシが何頭も昼寝をしていて、これこそ北海道という感じがしました。

 こうして観察した記録から、西表島から礼文島まで、ずっと分布している植物をピックアップしてみたら、ハマヒルガオ・ハマエンドウ・ハマボウフウ・ハマニガナがありました。砂浜という特殊な条件が、南と北の差を小さくしているのでしょう。

 もうひとつ、南北の変化を知るには、ひとつの種類が日本各地で生育する標高域を考えても良いでしょう。
 例えば僕が大好きなブナ。
 南限の鹿児島県大隅半島にある高隅山系の大箆柄岳(おおのがらだけ)では山頂(1236.4m)付近にのみ分布。
 愛知県では豊田市の六所山(611m)がブナ生育の最低標高地です。
 また、青森県の白神山麓にある十二湖周辺は標高100mに達しない低地からブナ林が拡がります。
 こうしたブナを中心とした落葉広葉樹を極相とする温帯林の日本における分布域を表わしたのが、次の日本地図です。これが森林の水平分布です。


クリックすると大きくなります

 皆さんも、これから植物観察記録をきちんと記録するようにして下さい。
 たくさん集まると、植物の垂直分布や水平分布を実感できるようになりますよ!


(2021.02)






北岡明彦さんを紹介します
 1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、 日本全国を飛び回る。
 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、 一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
ページを開いた本のイラスト  『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。










Copyright(C)2009 lovelyearth Japan All Rights Reserved