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森のひとり言
■vol.1 〜 ■vol.100

※このコーナーは、みなさんのご質問やご意見をもとに執筆されています。どんなことでも、お待ちしています。
こちら からどうぞ。

 その壱百壱 : 原点に帰って、人工林と天然林(1)

 現在、愛知県の人工林率(森林全体における人工林の割合)は64%と、天然林より人工林の方が多く占めています。ちなみに全国平均は41%に過ぎません。この64%という数字は、なんと第4位を誇って(ウーン、誇るべきか否か?)いるのです。
 もちろん愛知県は林業立県ではありません。林業立県で愛知県より人工林率が高いのは、高知県(65%で第2位)だけです。因みに、第1位は意外にも佐賀県(66%)、第3位は福岡県(64%)です。

 本県は日本三大ハゲ山地帯と呼ばれ、明治時代以後、アイグロマツ・ヤシャブシ類などを大面積に植えて緑化を図ってきた歴史があり、それも人工林率を高めている大きな要因のひとつです。
 また、堅実な県民性は、お役所の指導を素直に受け入れる素地があることも否めません。北設楽郡や旧南設楽郡・東加茂郡の山地帯に行けば行く程、スギやヒノキの人工林ばかりになるのには、少し違和感を覚えます。

 人工林を育てる唯一の目的は、育てた木材を販売して収入を得ることです。堅実な愛知県民は、子供のため孫のためを思い、こぞってスギやヒノキを植えてきました。
 最も盛んに植林が行われた60〜50年前は、日本の林業史のなかで、ほんの一瞬だけ大儲けした特別の時期でした。戦後経済が急上昇するなかで住宅建設が爆発的に増加し、戦争で使い尽くした人工林からの木材生産が不足して、木材価格が異常に上昇したことが原因でした。
 単なる需要と供給のバランスが崩れた結果でしたが、これがきっかけとなって、大造林(植林)時代が幕をあけました。

 その結果が、今、社会問題として私たちに立ちはだかっています。


 参考資料:「世界各国の森林面積〜森林率と人工林率」は、こちら

(2016.12





北岡明彦さんを紹介します
 1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、 日本全国を飛び回る。
 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、 一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
ページを開いた本のイラスト  『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。







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