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その五拾五 : 森を楽しむ(冬編) その3
冬の森を歩くと、春〜秋には気がつかなかったことや、あまり興味を引かなかったものに気付きます。
その代表選手がシダ植物です。花が咲いたり、紅葉したりしている時期はどうしても目立つものに目が行ってしまい、陰湿地に多いシダ植物はまさに日陰者扱いになります。
しかし、多くの植物の葉が散ると、常緑性のシダ植物が急に身近に感じられるようになります。
シダ植物は一般的には半日陰の湿度が高い所に生育する種類が多く、乾いた向陽地にはウラジロ・コシダ・ワラビが生えるくらいです。
里山に一番多いベニシダ(芽出しの若葉が紅色を帯びる)の仲間は、シイやカシの常緑樹林の随伴種で、暖帯域の林縁で個体数が多く、分化(種の変化)も進んでいます。
シダ植物の最大の特徴は、種子植物と違い、胞子で増えることです。葉裏にある丸いボツボツが胞子のう(中にごく小さな胞子が多数入っている)で、 成熟した胞子が発芽すると前葉体(ぜんようたい)が出来ます。前葉体は大きさ1〜2mmで半透明の緑色、ハート形をしています。乾燥や日当たりに非常に弱く、実にひ弱です。
この前葉体に造卵器と造精器が出来、そこで受精すると、シダ本来の姿の葉が出てきます。この前葉体の生える所が日陰の崖や湿った林床であることから、
必然的にシダもそうした所に多く生えることになります。
夏緑性のシダも多くありますが、まずはシダ入門編を冬の間にマスターしてみて
下さい。 |
(2013.01) |
北岡明彦さんを紹介します
1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、
日本全国を飛び回る。 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、
一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。 |
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