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その五拾四 : 森を楽しむ(冬編) その2
冬の森林観察の楽しみ第2回も、ガの話です。
葉がすっかり落ちた里山の雑木林を歩いていると、3種類のガの繭が時々見つかります。
繭(まゆ)は漢字構成の通り、艸(草かんむり)を食べた虫(の幼虫)が糸で(囲い)を作ったものです。
枝や葉からぶら下がる緑色のウスタビガ、葉裏についたまま地上に落ちる黄色のヤママユ、茶色の網状のクスサンは大型で、いずれも糸をとることができます。
その姿は古くから人々の目にとまったことから、それぞれの姿にぴったり合った名前で呼ばれていました。
「吊り蒲簀(つりかます):穀物などを入れるためのわらむしろの袋を吊り下げた様子」「山繭(やままゆ:山にいる蚕の繭で、そのままガの標準和名に採用)」「透かし俵(すかしだわら:中に俵が入った網)」です。
いずれも味がある名前ですが、語源である「蒲簀」「蚕」「俵」という言葉自体が死語になりつつあるのは残念です。
クスサンの繭からは良質な絹糸が取れ、上手に繭をほぐしていくと、10m以上の糸を作ることができ、とっても面白い観察ができます。これでハンカチを1枚作るには、200個程の繭が必要だそうです。挑戦してみてはどうでしょう。
その他にも、枝や幹に固着して冬を越すイラガの繭は1cmほどと小型ですが、白と濃茶の渦巻き模様がきれいです。
こうした森の宝物捜しは、冬の森林観察の楽しみです。
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(2013.01) |
北岡明彦さんを紹介します
1954年2月、名古屋市熱田区に生まれる。わずかに残る自然の中で「昆虫少年」として育つ。昆虫から植物、野鳥へと得意分野を広げながら、
日本全国を飛び回る。 名古屋大学農学部林学科卒。愛知県林務課を経て、現在豊田市森林課勤務。日本自然保護協会の自然観察指導員。フィールドでの活動を重視し、
一年中、 公私の観察会で活躍。動植物全般の博識と森林の専門家としての教唆には絶大な信頼がある。 その人柄にもひかれて 「北岡ワールド」に魅せられた人々は多い。
『中部の山々1,2』(東海財団)『日本どんぐり大図鑑』(偕成社)など執筆、編集。「面の木倶楽部」 「瀬戸自然の会」を主宰。愛知県瀬戸市在住。 |
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