散 歩 道



「御佩郷」考
岐阜県加茂郡七宗(ひちそう)神渕(かぶち)の天王山に祀られる神渕神社は、7世紀の「壬申の乱」に由来するという古い歴史が伝えられています。
麓から延々と参道を登っていくと、社本殿に至る直前の崖上の巨大岩に
「御佩郷」の摩崖文字が見られます。

いったい、いつ頃、誰によって
刻まれたものなのでしょう。
謂れは何処にも記されており
ません。
古語「佩く」は太刀を腰に帯びるの意味。御は敬語の接頭語ですから、貴族の刀剣を
祀る、あるいは製造に関わった地域という意味合いがあると推察されます。

摩崖文字の近くに、山裾の集落が見下ろせる開けた地点があります。ここが「御佩郷」なのでしょうか。
七宗町から北に峠を越えると「飛騨国」下呂市ですが、その南端に位置する金山町からも、神渕神社までお参りに行ったと地元の方に聞きました。「御佩郷」は、かなりの広域であったと思われます。
神渕といえば数十年前まで「神渕松茸」の産地として有名でした。アカマツの山でした。
現在はヒノキ人工林が優占していますが、尾根にはマツが残っています。「アカマツの山」が存続していたということは、盛んに樹木が伐り出されて植生遷移が進まなかったことを意味しています。日本三大はげ山地帯と言われる、愛知・滋賀・岡山は、いずれも焼き物の産地でした。山の木は燃料として大量に使われたからです。しかし、神渕周辺に、陶磁器の産地はありません。木材大消費の人口集中都市もありませんでした。

山に囲まれて平らな土地。
真ん中に中之保川が流れ、山際に
「鬼の大石」と呼ばれる巨石。

   製鉄に因む地名、適した地形。
神渕から西へ、飛騨・木曽川水系と長良川水系の分水嶺となる北条峠を越えたところに多々羅という集落があります。
 さらに、隣の集落名は間吹。
   「鬼」は優れた技術や力量を持った人びとを指していることもあります。



この辺り、現在の行政区は関市。
刃物の街。起源は鎌倉・戦国時代に遡るとされています。それ以前には、この地域での製鉄、武器製造は無かったのでしょうか。

壬申の乱では大海人皇子軍は美濃で軍備を整え、勝利したとされています。後に牟義→武儀に名を残す、この地の豪族身毛(むげ)氏も提携したのでしょう。彼らは鉄によって力を得、この辺りに勢力を拠っていたとも考えられます。

上古から中世、この国の政権者が版図を広げ生産性を高めるためには、武器や農具に用いる鉄器の生産と製鉄は不可欠のものでした。
その火力としての木材と生産者の食糧も併せて確保できる範囲が、「御佩郷」であったとは言えないでしょうか。

鉄鉱石や砂鉄産出の根拠は未定ですが、神渕神社の言い伝え、周辺山地の植生、地名などから気儘に想ってみました。


撮影場所:七宗町神渕、関市中之保   撮影:2023年3月


参照web記事
 :七宗町ホームページ  https://www.hichiso.jp/top/kanko/sightseeing/culture/
 :岐阜女子大学デジタルアーカイブ研究所
    https://digitalarchiveproject.jp/information/%E7%A5%9E%E6%B8%95/
 :ラブリーアース ホームページ 散歩道 https://lovelyearth.info/test/phot60.html
 :相生山からのメッセージ https://aioiyama.blog.fc2.com/blog-entry-1050.html








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