雷鳥(ライチョウ)

 この国の雷鳥は、人を怖れない。天敵や気象の変化には鋭く敏感であるにもかかわらず。
 山岳雑誌の記事で読んだことがある。
「海外にもライチョウの仲間はいるが、狩猟の対象にされてきたためDNAに人間を避けることが刷り込まれた。しかし、日本では高い山にしか生息しない彼らを《神の使い》としてきた。結果・・・・」

 アルプス3.000m級の山々。森林限界を超えた登山道やお花畑。雷鳥に会えると嬉しくなるのは、その姿かたちや悠然たるしぐさのためだけではなく、私たちの先人の自然に対するこころにも出会えるからかもしれない。そして、自分の中にもそれを見つけることが出来るから。(続く)